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福岡高等裁判所 昭和49年(ラ)82号 決定 1975年1月13日

抗告人

有限会社山崎商事

右代表者

山崎国雄

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告の趣旨及び理由は別紙<省略>のとおりである。

ところで、職権をもつて按ずるに、本件競売事件の目的となつている九筆の土地は、うら三筆のみが道路に面し、他の六筆はその背後に所在する配置関係にあることは、鑑定人松尾竜一の評価書添付の図面により明らかである。したがつて、右九筆全部を一体として利用することによりはじめて有効な利用ができる状態にあり、右三筆を除外すると他の六筆は袋地となり、その所有者は三筆の所有者との間に囲繞地通行権の設定を得なければ六筆の使用を有効になしえない関係にたつ。してみると、本件競売において右九筆を個別に売却すると、右六筆が袋地となる可能性が生ずる。本件はまさにかかる事態を生じた場合にかかる。したがつて個別競売に付する場合は、道路に面した三筆の土地が道路に面しない袋地となるような土地と等価であるとは到底考えられず、相当大幅な価額の相違が存することは充分予測しうるところである。しかるに鑑定人松尾龍一はその評価において一平方メートル当りの価格を各物件ともほぼ等価のものとし、原裁判所は、右鑑定人の評価に基づいて各物件の最低競売価額を定め、これを一括競売に付することなく公告した。右公告は、一括競売の場合はともかくとして、個別競売の場合においては右の評価額を最低競売価額と定め公告することは、正当な最低競売価額を公告しなかつたものといわねばならず、この点において本件競売は許さるべきではない。

されば、抗告人の主張について判断するまでもなく、本件競売を不許可にしたことは相当であるから、本件抗告は棄却を免れず、抗告費用の負担について民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり決定する。

(亀川清 美山和義 田中貞和)

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